2018年5月1日火曜日

套路はゆっくり打つのか?

套路はゆっくり打つのか? と聞かれれば太極拳なんだから当たり前と言われると思います。然し、私の理解は少し違います。太極拳は精密に打つのがしっくりくる感じです。陳式太極拳に於いては一般に小架式は緊湊(無駄なく精密にまとまっている)、大架式は舒展大方(伸びやかに大きく)と言われていますが、この精密に打つ事がこの大架式に於いても大事であると考えています。精密に打つ結果として速度が遅くなるというのが実情であると思います。というのは一式、一式、意念を用い、正しい勁を出していこうとすればやはり打つ速度が遅くなります。又、この精密に打つ事ができなければ相手の攻撃に対し素早く対処できないのが実感です。精密とは意念、勁ともギリギリまで感度を高めれば当然速くは打てない訳です。こうして感度を高める事によって素早く動く基礎が作られているように思います。その基礎が出来た段階で速く打つ事も必要です。これは陳発科老師の教えにもあるように套路は速くも打てなければなりません。但し、あくまでも精密に打ててから速く動く事が肝要です。精密に打てずに速く打てば套路が雑になります。意念も雑になり、勁も出てきません。例えば掩手肱捶は陳式太極拳の典型的な打撃の招式ですが、殆どの人がここで発勁を行い、速く突きます。この場合打つ手が纏糸勁が出ているかどうかは非常に重要なポイントです。空手をやっていた人の多くは正拳突きの要領で手を捻じって螺旋回転させてはいますが、纏糸勁が出ていない人を多く見受けられます。纏糸勁が出ているかどうかはゆっくり打った時にもう一人の人に両手で拳を強く包んでもらい、その状態でも手が回転するようであれば纏糸勁が出ていると言えますが、多くの場合回転できずに止まってしまいます。速く打てば纏糸勁が出ているかどうかは誤魔化せますが、ゆっくりだと誤魔化せなくなりますし、他の人は見ているだけで分かるようになります。このように纏糸勁が出てから速く打つと太極拳の突きになっていきます。又別の言い方をすれば、打つ際に丹田から直結した感じが出てくれば速く打っても良いでしょう。このように一つの招式を完成させるのに精密に作っていく為、動きが当初はゆっくりとならざるを得なくなるというのが正直な感想です。

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