2017年6月1日木曜日

散手(組手)に関して

ある時馮老師と2人だけになった時に私に突然言われました。太極拳で強くなろうと思えば散手をしなければならない。散手は千変万化である。それに対応していけないようでは駄目だと言うような事を言われました。私は太極拳で強くなろうと思っていましたが、そのような事は一度も馮老師は仰った事がありませんでした。しかしまるで私の心の内を見透かしたように突然そう言われました。おそらく馮老師もそのようにして強くなったのでしょう。又馮老師も同じような事を陳発科老師から言われたのかもしれません。
又私の直接の老師である張老師からも散手をやらなければ強くなれないという事を言われました。張老師は強くなる為に馮老師と同じ長屋に住み馮老師が仕事から帰るのを待って太極拳を習われた方でした。散手はしょっちゅうされていたとの事でした。従い、強くなる為には散手は必須です。但し、推手と散手でも述べたように散手を始める時期も大事です。特に散手を別の武道でやって来られた方はそのくせを取り、太極拳の散手をする必要があります。最初から散手をやったのでは前の武道の散手となり、なかなか太極拳の散手とはなりません。このタイミングは直接老師に御指導を仰ぐ必要があるでしょう。
最近(今年の4月末)ある太極拳の宗師が散手でボクシングか何かの選手に負けて話題になりました。又負けた後もインタビューで自分が太極拳の内功を使えば相手は死んでいたというような事を言っていたと思います。しかし、ビデオで見る限り散手に慣れた様子は見られませんでした。どんな威力があっても当たらなければ意味がありません。最初から後ろに下がるようではまず散手に勝ち目はなさそうだと思いましたが、結果は御存じの通りです。
最初に太極拳が世に広まったのは楊式太極拳の楊露禅が北京に出てきた時でした。太極拳が本当に強いのか世の人は疑問の目でみていましたが、楊無敵と言われ太極拳の強さを証明しました。その後楊式太極拳も楊露禅のような達人が出なくなり、太極拳の威力が疑われ始めた頃、陳発科老師が北京に来られその無敵と武徳を称賛されたのでした。陳発科は「太極一人」と称され、陳式太極拳でも陳長興と並ぶ出色の人物とされました。然し北京陳式もそろそろ発科老師を初代とすると3代目から4代目に入りました。これからがいよいよその強さが試される時期となるのでしょう。