2016年11月10日木曜日

推手の練習方法

推手の練習方法と目的について述べてみたい。

推手は手が触れ合う事から皮膚から多くの情報を得る。 この情報を基に力を使う事なく相手の力を無力化する事(これを化、中国語の発音はファー)を目的とする。力を使わない事によって徐々に感覚が鋭敏になってくる為、僅かな動きでも察知できるようになる。 相手の勁を聴く事からこれを聴勁といいます。

第二段階としては勁が出る前にさかのぼって意が出る時を捉えるようにしていきます。。通常人は心が動き、意が動き、身体が動くという順になっている。第一段階では身体が動くとそれを察知するが、第二段階では意が動いたらそれを察知して対応する。この段階では心や意が動いた事が分かってもこちらの対応が遅れ結局は相手の身体が動いてから対応する事もあるが、その場合でも上記第一段階よりも早く相手の動きを察知しているので余裕を持ってさばけるようになる。この場合こちらの手で相手の手をさばく事になるが、こちらの意を触れている部分に持っていかず、常に全体を捉えている事が肝要です。又うまくいって意が出てきた段階でこちらの意でさばければこちらは殆ど力を使う必要が無い。

第三段階としては相手の心が動くか動かない所で察知する。即ち陰陽が分かれる前ではあるが、陰陽が分かれるその機を含む状況、これ即ち太極である。 これを把握する事が求められる。
そうすれば常に後の先を取れるのである。この第三段階を経て組手(散手)に入っていく次第です。この太極の把握に関しては項を改めてもう少し詳細に述べてみたい。

このようにして推手を散手の前段階の練習として位置づけ練っていくものです。
従い、もしこの推手を試合として行った場合、こちらも相手を倒そうと意が出てくる事になりますが、そうした場合もし相手が心を澄ましこちらの意を捉えようとした場合負ける事を意味します。従い、試合として筋トレをして相手を倒しても全く意味がありません。散手となれば一発で倒される事でしょう。あくまで太極を掴む事が推手の目的です。従い、勝とうとしない事が非常に大事でそうすれば相手の太極が掴み易くなります。結果として勝ったとしてもその勝ち方が重要になります。太極を掴んで勝ったのかどうかが問われるのです。

私が馮志強老師に太極拳で強くなるにはどうしたら良いかと、ある時にお聞きした事があります。
その時の回答は散手をやる必要がある。散手は千変万化であると。但し、その前に十分推手を行う必要があると言われました。この意味は今では皆さんもお分かりですね。上記のように散手の準備としての推手をやれという意味でした。推手が目的の推手では全く意味がありません。
当会では推手を攻める側と守る側に分けた推手もしています。但し、守る側は相手が攻めてきた瞬間だけは攻めても良いというルールで練習しています。そうすれば守る側は心を静かに研ぎ澄まし、相手と一体とならなければ太極が掴めない訳です。これを自由推手の前段階と位置づけ練習する事によって誰もが太極を掴む事に専念できる訳です。


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